【ノルウェー】野生のシャチと泳ぎたい(2022)

ノルウェー

人生の目標の最終地 Norwayでのマイナー旅


 「知床での野生シャチ探し」の次に書きたかった旅日記はノルウェーでの野生のシャチと泳ぐ旅です。またまたシャチ関係の旅日記。この2つだけでも最低限紹介したかった。この体験が忘れられずブログを立ち上げた。

イントロダクション

この旅日記で紹介したい点は3つ

・日本一フットワークの軽い友人のありがたさ
・冬のノルウェーがいかに暗いか
・野生のシャチと泳ぐ過酷さ

冒頭からなんだか雲行きの怪しい旅日記である。今回も長文になるかもしれないがお付き合いいただけると幸いです。動画が大量なので家のwifi下、暇なときに読んでほしい。

 知床での野生のシャチとの出会いは私に幸福感と達成感をもたらし、非常に満足のいく旅だった。なんせ憧れの野生のシャチと出会えたからだ。しかし私は船の上でシャチを眺め、シャチは海の中で私に意をかいさず。これは対等な出会いだったのだろうか?船の上からこんにちはとはずいぶん偉そうではないか?同じ空間を共有出来ていたのか?
といった妙なこだわりがふつふつと湧き出てきたことも事実である。

このこだわりは年々大きくなり、更には私の旅に対する刺激もどんどん過剰要求になったことも相まって「野生のシャチに会いたい」という夢はいつしか「野生のシャチと一緒に泳ぎたい」と変わっていった。

 ここでシャチについて述べると、海の生態系の王者であることは知床の旅日記で触れている。サメやクジラさえも捕食するking of oceanなのだと。つまり人間なんてシャチから見たらやせ細ったアザラシみたいなのである。
 人間は美味しくないから捕食はしないかもしれないが、簡単なちょっかいで死ぬほどの体格差なので、シャチと泳ぐことの難易度の高さはシャチに詳しくない人でも容易に想像できよう。

 ゆえに世界中でシャチをwatchするボートツアーはいくつかあれど(カナダ、知床…)、野生のシャチと泳ぐツアーなど聞いたこともない。でもやってみたいんだから仕方がない。私は必死になって探した。カナダ、スリランカ、知床色々と調べたがどこもそのようなツアーは開催しておらず。そりゃそうだ。そんな中、英語で検索していたらヒットしたサイトがあった。「ORCA NORWAY」。

ノルウェーのシャチ

ここでORCAとはシャチの学術名で、NORWAYとはあのノルウェーである。世界地図の左上の方にある寒そうな国の一つ。フィンランド、スウェーデンとの位置関係が一向に覚えられないあそこら辺の国。

 私ははやる気持ちでサイトをクリックするとそこにはシャチの海中写真が!カッコいい!これよ!この目線でシャチと合いたいのよ!同じ目線の高さでさ!

Home | Orca Norway
Orca Norway was the first to offer the unforgettable experience of diving with Orcas. Since 1992, Olav and his team has …

(写真)ORCA NORWAYより。 これよこれ!まさに私が憧れの世界!

ここはなんと世界で唯一野生のシャチと泳ぐ、シュノーケリングサービスを提供している地域らしい。これよこれ。私が探していた冒険はこれよ!

 先述の通りシャチは海においては何でも食べる最強の生き物であるが、なぜここはこのようなシュノーケルツアーを実施できているのだろうか。色々と調べるとシャチの生態に深く関わっていることが分かった。シャチは一般的には一種類の生き物と思われがちだが、実は遺伝子の異なる複数種類の個体群が存在する。詳しくはこの図巻を読んで欲しい。カッコいい写真と共に興味深い説明がたっぷり記載されている

(写真)一家に一冊あっても困らない図鑑、写真集です

 これによるとノルウェーに生息するシャチは魚のみを捕食する遺伝子を有し、アザラシやイルカ、クジラなどをも捕食する知床のシャチとは全く異なる個体群らしい。興味深いことにこの遺伝子が異なるシャチたちは、まったく交じり合わない関係であるらしい。
 そんなこんなでノルウェーのシャチはサーモンやニシンしか食べないことで人間には目もくれず、安全とのこと。ほんまかいなと思うが頭のいい人が研究して、ノルウェー人の経験も大丈夫と言ってるわけなんだからそうなんだろう。

シャチツアーの申し込みと準備

 前置きが長くなったが、やることは決まった。ORCA NORWAYに申し込みノルウェーに行き冬の海に飛び込むこと。
ノルウェーに行くことは難しくない。飛行機が頑張ってくれれば私は寝てるだけだから。冬の海に飛び込む、これはかなり勇気がいるが特別なドライスーツを用意されるとのこと。何とかなるだろう、いや何とかするしかない(私は夏のプールの授業でさえ唇が真紫なるほどの寒がり)。よし、申し込もう!

 さてさてお値段は~と見積もりを取る。ツアーは基本的にはボート上で生活するクルーズスタイル。3日のクルーズと6日のクルーズが選べる。私は日程的に3日が都合よいかな。見積もり依頼送信!

 送られてきた見積書には3日間のNOK 31,200と記載。はいはい。ノルウェーはEUに所属していないから独自通貨なのね。NOKノルウェー・クローネなんて初めて聞きましたよ。で、日本円でおいくらなんよ? ぽちぽち…
424,944円。ん!?

424,944円!? まじで?
3日間のボートツアーよ。1日約15万円!?

(写真) 恐ろしい見積もり表。NOKという単位の恐ろしさ。
ちなみに2026年6月現在、NOK42,000への値上げと円安の影響で71万円。あの時行ってよかった…

 いやいや。マジで高い。3日過ごす船も満足に足も延ばせないこれよ!

(写真)実際に私が宿泊した船の部屋。170cm代の私でも明日が伸ばせないサイズ感。でかいイタリア人辛そうだった。

 とはいっても世界中でシャチスイムツアーしているのはここだけだし、人生の夢なのでお金の問題は仕方がない。行くしかない。これくらいの見積もりでひるむような私の夢ではない。
ちなみにノルウェーのトロムソ周辺地域のツアーなのだが、シャチが回遊するのは冬の時期らしい。
 トロムソというのはここ。NORWAYの最北端の街。日本人にはなじみがないのだが、高緯度の街には白夜極夜が存在する。白夜のほうがよく聞く単語だろうが、夏の時期に太陽が沈まない一日中明るい現象である。小学生が聞いたら「一日中外で遊び放題じゃん!」と思えるラッキーボーナスみたいなシーズンである。小学生脳の私もそう思う。
 白夜に関しては別途夏のアイスランド旅行記でも書こうと思うのでそこで触れようと思います。
たいして極夜とはその逆。つまり一日中太陽が昇らないシーズンの事を指す。太陽が昇らないといっても水平線の近くまでは太陽が昇ろうと頑張るため、10時~15時くらいは水平線の先がうっすら明るい らしい…噂では。ORCA NORWAYはこの時間帯に勝負を仕掛けるらしい。

 おいおい。15万円/day払うけど、実質5時間稼働だと思うと3万円/hじゃないですか。500円/min, 日ごろから節約してハーゲンダッツは年一回の誕生日しか食べていないが、これじゃあ毎分2個近く食べられるぞ。そんな金額。

 ええい。しょうがない。ノルウェーの物価が高いのも、シャチ様が夏ではなく冬にしか来てくれないのもどうしょもない。荷馬車のごとく働いて金を貯めるしかない。ここを問題視するのはやめよう。

 次に気になる問題は3日間の船生活が相部屋だということ(先の添付写真を参照)。3日間の船での生活で初めましての外国人とやっていくのは正直私は問題視していない。培ってきた旅経験で楽しくやっていけるだろうという自信があった。後述するがこの時は海外駐在している関係で英語もそこそこ喋れた。でも相部屋はハードル高いよね~。でっかいいびきのうるさい欧米人と一緒の部屋だったら嫌だな~という気持ちが正直あった。奇跡的に日本人が参加していないか考えたが、日本から高額のシャチツアーに参加する人がいるのだろうか… 

 決めた。だれか一緒に行ってくれる友達を探そう
多分この旅の最大の難所はここだったと思う。もしあなたが知人から急に「ノルウェーに野生のシャチと泳ぎに行かない?航空券ホテル別で45万円かかるけど」と言われたらどうだろうか。えっ!シャチ?危なくないの?えっ、てか高っ!、トータルで旅費いくらかかるのそれ。が正常なレスポンスだろう。

 加えてこの時の私はドイツに住んでいたため「あっ!ノルウェーのトロムソまでは自力で来てね。現地集合現地解散!」といいう無責任極まりないお願いも追加されている。10,000人に聞いてもOKしてくれる人は一人いるかどうか。旅って空港からワクワクが始まるもんね。羽田、成田で集まってキャーキャー言いながら飛行機楽しみたいよね。長距離のヨーロッパ路線ならなおさらである。

 勝負を始める前から絶望的な状況だった。スラムダンクの安西先生でも諦めることを許しただろう。私はなかばやけくそな気持ちで、知る限り最もフッ軽な知人にラインした。大学時代に所属していたサークルの先輩に。ここではAさんとしよう。

「Aさん~。ご無沙汰です。ノルウェーにシャチと泳ぎに行きません?シャチツアー代だけで45万円で、航空券等は別です。現地最寄り空港集合、解散で(/・ω・)/」
まるで上野公園のパンダを見に行きませんか?上野駅集合で!の様なノリだ。ふざけている。やけくそにもほどがある。 ラインを送って自分でふと冷静になり30分ほど片づけをしていたら、スマホが振動した。Aさんからだ。
いいよ~年末でよければ仕事は休めると思う(‘ω’)ノ
えっ!マジで!? 考えた? よく考えた? たいして詳細説明してないけど? 鴨川シーワールドじゃないよ?
 私が30分の間に冷静になりすぎて「本当に大丈夫ですか? 冷静ですか?」と聞き返すも返答は
OK~。こんなお誘いがないとシャチと泳ぐこと人生でないだろうしね

神様である。持つべきものはフットワークの軽い友人です。シャチに興味ないのに、こんなにもフッ軽な人が日本にいるのだろうか。我こそはもっとフッ軽だ、私の知人にもっとフッ軽な人がいる という方はぜひコメントを残してほしい。フッ軽王者決定戦したい。


  お金、同行者、参加する覚悟、ついに3つが揃ったのであとは話が早い。清水の舞台から飛び降りる気持ちでクレカ支払いを完了し着々と準備を進めた。参考までに推奨持ち物は以下の通り。シュノーケル機材、ドライスーツはレンタルできるのでその他を持っていくことになる。

(写真) the most importantな持ち物。メリルウールのアンダーウェアーや防水の靴、手袋など

ついに始まったシャチと泳ぐたび!

 と申し込み準備フェーズでだいぶ長くなったので、話を進めよう。なんやかんやで当日になり私たちはトロムソにたどりついた。日本から行く場合、何らかの航空会社でノルウェーのオスロにまずは一度向かい、ノルウェーの国内線でオスロ→トロムソと移動するのが一般的だと思う。

 トロムソの街で日本一フッ軽な友人と合流できた際は感動した。世界の端っこで日本の友人に会えるなんて。私が感無量になっている最中、友人は「うぃ~す」と居酒屋の前で合流した時のテンションで挨拶してくれた。この人にとっては渋谷もノルウェーもそんな変わらないのだろうか。

(写真)たどり着いたトロムソの街。これは19時くらい。

 思ったよりトロムソの街は栄えていた。そりゃそうだ、トロムソの街はオーロラがよく見られることで世界的に有名な街なのである
 冬のトロムソは極夜なんでオーロラにはうってつけ。街中にはオーロラを見ようとカップルや幸せそうなファミリーで溢れかえっていた。そんな中シャチを追いかけるぞと意気込んだ日本人男2人。浮いている気がする。

 私たちのツアー工程は以下の通り。シャチツアーの前後でトロムソ泊することを推奨されている。この時期は吹雪で飛行機も飛ばないリスクもあるので、ご参加される際は日程に余裕をお持ちください。実際私たちの帰路も、吹雪で飛行機(トロムソ→オスロ)が大幅に遅延してオスロで追加の一泊を余儀なくされた。

(写真) ツアー工程表。本当にシャチと泳ぐためだけの旅行内容。

(写真)夕飯のピザ。コーラと合わせて4,000円くらいだった記憶。高いよ(泣)

(写真)数少ないシャチグッズ。思ったよりシャチ押しではなかった。あまりにもダサいデザインで手が伸びず…

(写真)町一の観光スポットの協会。まぁ綺麗。それよりも暗い。これで朝8時くらい?

(写真)最も明るい時間帯の11時でこんなもん。あちゃー、この明るさで海に飛び込めと…?

 日中でも極夜の影響で薄暗いトロムソの街を散策し、午後からはシャチツアーのポイントまではバスで移動。指定されたホテルのロビーで待っていると巨大なバックパックを背負った欧米人がぞろぞろ集まってきた。明らかにオーロラツアー客とは違う装いのため、すぐにシャチツアーの人たちだと気づいた。その数30人くらい。予想通り日本人は私たちだけだった。アジア人すら私たちだけだった。

 適当な挨拶、確認事項を振り返り大型バスで船の停泊所まで移動。たしか4時間くらいかかった気がする。ついにシャチと泳ぐためのツアーが始まった。私はこのバス移動の時点で終始興奮だった。なんせここには世界中から45万円払ってでもシャチと泳ぎたい変人物好きが集まっているのである。
疑いようもなく全員同志だ。みんな既に大好き

シャチの話をしても軽くあしらわれてきたあの経験は、この3日間では起きないだろう。小学校の総合学習で各自独自の研究テーマを設定して発表する機会があったが、私のシャチ発表に誰も質問してくれなかった苦い記憶ともここでは関係ない。
 とはいえ日本からの同行者もいるのでおとなしくバスでは友人の隣に座りフガフガしていた。

(写真)トロムソの街から全くよくわからないところにバスで運ばれている。修学旅行気分。

 仮眠とスマホイジイジを繰り返し、バスはついに船着き場に到着。


これが今回3日間寝泊まりしながらシャチを追いかける船です。

(写真) 私が3日間過ごした船。30人くらいいた母体が15人、15人と2隻に分かれる

う~ん。漁船!45万円だろうがお構いなしの漁船!豪華クルーザーではない!

わかってはいたがなかなか味のある船でした。まぁリビング等は快適だったからいいんだけどね。各自の部屋はとにかく狭すぎて基本的にはリビングにみんないた。

(写真)こんな感じでリビングでご飯を食べたり、奥のテーブルソファーでダラダラ過ごす

 私たちの船のチームは、陽気なイタリア人親子、金持ち上品フランス人親子、冒険好きアメリカ人カップル、優しいごっついスペイン人家族、シャチ好き単独ポーランド人、その他もろもろヨーロッパ系の人たち+日本人2名の構成。あれ?ここでの参加者紹介でシャチ好きと説明されるのが単独で参加しているポーランド人だけ。この人とは気が合いツアー中よく一緒にいたがシャチ愛がすごく、使い込まれたシャチのぬいぐるみを持参していた。可愛い。何より今は無職なのにこの高額なシャチツアーに参加したという覚悟の強さ。ブチャラティも太鼓判を押すほどの覚悟である。

 他方でほかの参加者の意義ごみはというと、

アメリカ人カップル:「僕たちは冒険が好きなのさ。刺激的な旅を求め世界中を旅行している」
イタリア人親子:「なんか楽しそうじゃない!?ダイビングとか普段しないけどこれはおもろそう」
フランス人親子:「今年のクリスマスはいつもとちょっと変わったことがしたくてねぇ。ふふふ」

 みんな思ったよりノリで参加している。45万円の重みがやっぱり日本円と海外の給料水準では違うんかなぁ。アメリカ人カップルの動機はいかにも私が想像するアメリカアメリカしてるし、陽気なイタリア人親子はノリ最優先とラテン系の王道、フランス人はみんなに良さそうなワインを持参してふるまうなど人生の気品があふれていた。シャチはあくまで冬休みを盛り上げる手段の一つなのだろう。人生の夢をかけている私とはスタンスが違った。ちょいと寂しい。

 とはいってもみんなこのイベントはとても楽しみにしている仲間だ。毎夜行われるシャチ生態の講義では積極的に質問するなど最高の雰囲気だった。まぁ講義で一番ぎらついていたのは私とポーランド人のだったのは言うまでもない。

 船の上ではシュノーケル道具のフィッティングなど、明日からのシャチスイムに備える準備が開始されてた。使用するスーツはドライスーツと呼ばれるものでサーフィンなどでおなじみウェットスーツと異なり中に水が浸水しない機構の特別なものを使う。この中にはメリルウールの下着を着ることを推奨されている。寒がりの私はユニクロの超極暖とフリースも着込んだ。

(写真)ドライスーツの参考。水の侵入を防ぐために腕と首をギチギチに締め上げるのでしんどい

 写真を見るとわかるようにブーツまで一体化成型されているため、海水にさらされるのは手と頭だけとなる。頭はウェット素材のフードで覆うとはいえとにかく寒い。真冬のノルウェーの海にさらされると指や顔が一瞬で冷たくなる。というか痛い。そりゃそうさ。雪降ってるんだもの。ドライスーツは簡単には脱着ができないため、体が冷えたからってすぐにトイレには行けない。これが想像以上にプレッシャーのため、もし参加される方がいるなら水分の取りすぎには注意しましょう。

 機材セットも終わりこの日は終了。明日の朝から実際にフィヨルド中を船で移動してシャチを探すらしい。シャチウォッチングとシャチスイムでは難易度が大きく異なり、シャチの群れを見つけても彼らが高速移動している場合は一緒に泳ぐことができず見送ることになる。フローはこんな感じ

  1. 大型船でシャチを探す。しばらく遠くから並走
  2. シャチが速度を緩めたらシャチスイムのチャンス。小型ゴムボートに乗り移りシャチに近づく
  3. シャチの進行方向ちょい先で海に飛び込み待機。シャチが通り過ぎる際に海の中で観測
  4. シャチが速度を緩めない場合は1に戻るか、べつの個体を探す

本当にこれが難しい。特に2の機会がとても少ない。彼らは人間にとってはかなりの高速で移動し続けているので、停泊している群れがなかなか見つからない。実際に小型ゴムボートに乗り移っても、シャチが速度を緩めず海に飛び込まないタイミングが多々あった。それに加え極夜の影響でシャチを目視で探せる時間帯が10~15時に限られている。時間的な制約がとても強い。

 

トロムソでのシャチツアースタート

 ドキドキのシャチスイム1日目が始まった。

 出航の様子がこちら。

(動画)これが日中の明るさなんだぜ…信じられないだろ?

10時港を出港。おいっ!なぜ明るい時間になってやっと出発してるんよ!!時間もったいないんだから、暗い時間に出向して明るい時間はシャチ探しに費やしなさいよ!!

けちでせっかちな私はハヨハヨ出航してくれと懇願しまくっていた。ガイドさんは焦ったってしょうがないわ~と一蹴。周りもそんなに焦っていなかった。これが人間としての成熟具合の差か…
効率重視の日本人にはこの欧米の時間の流れ方が合わない。まぁ安全第一なのかなぁ。

 白夜の貴重な明るい時間帯にシャチを探すこと1時間、早速その瞬間が現れた。

「オルカ(シャチよ!)」

甲板に声が鳴り響いた。みな指さす方角を見る。いた!シャチだ!ノルウェーのシャチだ!!
雪のフィヨルドの間を優雅に泳いでいる。かっこいい!!
Aさんにとっては初めての野生のシャチとの遭遇のため、かなり感動してくれた。これだけでも日本から来たかいがあると。よかった、45万円の投資は想像よりも早く回収できたみたい(責任逃れ)。

 早速いそいそとドライスーツに着替えて、小型ゴムボートに乗り込む。心臓がバクバクだった。ついにシャチと泳げるんだ!夢がかなう!Dreamがcome trueだ!

(動画)初めてのシャチスイム?

と思ったのもつかの間、シャチが早すぎてなかなか止まってくれません。そして遠い。残念ながら今回は海にも飛び込まず見逃すことに。え~ダメもとでトライさせてくれればいいのに!海入りたいよ!
(寒そうだけど)

 焦る気持ちをぐっとこらえて、またクルーズ船で移動。ショボーンと海を眺めていると、今度はクジラの大群が。10頭近くが直列で泳いでおり壮観だった。またガイドからゴムボートに移動するように指示がある。せわしない。しかし嫌じゃない、むしろうれしい。これがやりたくて

(動画) クジラとの遭遇。個体名は忘れた。とにかく早い。爆速。

 動画を見ていただければわかるが爆速。ありえないくらい早い。人間がちょっとフィンキックしたくらいでは追いつかない。ゴムボートを飛ばし進行方向に先回りして待機。若干速度が緩まった時にガイドが「go! go! go!, divie now, dive!!!!」と指示を出した。ついにノルウェー最北端の海に飛び込むんだ、行くぞと勇気を出してdive。

 「つっ、冷たい!痛い!そして暗い。海の中全く光がない。怖い。クジラどこ?? えっ?もう過ぎた?」

 もういろんな情報が一気に体に押し寄せてきてパニックである。爆速クジラ集団はあっという間に我々を抜き去り先に進んでいったとのこと。これだから野生の鯨スイムは…。過去に冬の荒れくれる沖縄でホエールスイムした際も似たような状況だった。あの時二度とイルカ以上の生き物とは泳ぐツアーをしないと誓ったことを思い出した。何も反省していない。
 我々はただ濡れただけで成果もなくゴムボートに戻り、そのままクルーズ船へ帰還しこの日のシャチ探索は終了。近くの集落に向けて移動を開始した。どうやら海のど真ん中で寝るわけではなく、どこかの岸に停泊して泊まる様子だ。

 私の心中は「マジかよ~。初日はシャチスイムすらできず終了?これで1/3が終わり?これで15万円?」と貧乏くさい器の小さいボヤキで溢れていた。野生を相手にしているのでしょうがないことは過去の経験で分かっていても、金額が金額なだけに納得できない。他方でほかのツアー参加者は「今日はクジラでいいスイムの練習ができた。シャチも船の上から見れた。明日に期待できるわね~」と感想を言い合っていた。もう人間としての器の大きさが違う。この場では日本人は我々だけ。日本人の品位を疑われないよう、私は自分の貧乏くさい感想は心のうちにしまった。しかし日本人しか見てないこのブログには胸の内を吐露することをお許しいただきたい。

 この日は船で夕飯をいただき、夜は有志で近くのバーに向かうという。こんな辺境にバーなんてあるの?とおもいついていくと波止場から15分くらいのところにログハウスが。
とっても素敵なバーだった。お酒は缶ビール。お酒の酔いのおかげで本日のシャチスイムの失敗もなんだか許せるようになってきた。狭い心もビールと暖かい談笑が広げてくれる。

(写真) 本日のシャチイベントを振り返える我々。店の雰囲気最高!北欧って感じ

感動のオーロラとの遭遇

 いい気分で店を出て上を見上げると、夜空に薄い雲のような筋が見えた。雲のような、霧のような、灰色の不思議な靄のようなもの。ガイドが言った「Look. Northern Lights!」そう。オーロラだ。光が弱いときは肉眼では色がついているように見ぜず、灰色の雲のように見える。それをスマホで写真を撮ると緑色に見えるのだ。

(写真)オーロラの初期段階。この時点では靄のようなもの

「ほえ~。オーロラまで見れちゃったじゃん。ラッキー。さすがオーロラの聖地トロムソ周辺」
なんと思っていたらオーロラがどんどん強くなり、肉眼でもはっきりと色が強くなってきた。最終的にはスマホの写真と変わらないくらいまで緑や黄色に色が変化する。

 泣きそうになるくらい幻想的だった。これが旅の目的だったら泣いていただろう。シャチのおまけじゃなければ。

(写真) 形を変えていくオーロラ。光のカーテンとはまさにこのことか

 Aさんもこのオーロラには大変感動。よしよし。最悪シャチがだめでもオーロラ旅行に誘いました~と言えばいいだろう。うん。ちょっと高い3泊オーロラツアー、たまにシャチが見えるオーロラツアー。

 結果的に、このシャチスイムの3日間はオーロラ大爆発のタイミングだった。船で休んでいると幾度となくオーロラが見えた。本当に視界を埋め尽くす光に包まれていた。オーロラが出るたびに私はAさんを甲板に誘おうとしたが、「またオーロラ?防寒着に着替えるのめんどくさいから今回はいいかな~」と後半は断られた。オーロラを断ってXを見ていた。いやいや、そんな贅沢なXある?これが見たくて世界中から人がやってきて、見れない人も多いんだよ?

 そんな時はどちらとともなくポーランド人のシャチ好きの女性を誘ってオーロラを見に外に出た。「はなひげ、オーロラ見に行かない?」こんなロマンチックなお誘いあるだろうか?わたしたちは甲板で愛をささやきあいシャチ愛を語り合った。オーロラの下で。新海誠の映画化と思った。

 まぁ正確にはロマンチックな会話ではなく、ポーランド人の無職で帰国した後の生活の不安やドイツバーン(ドイツ国鉄。とにかく遅延しまくる。勝手にキャンセルにされる)の悪口など雑多な内容であった。まぁそんなもんである。

(写真)本当にすごいオーロラ。これがずっと空の上を形を変えて光り続けいている世界

 

ついにシャチスイムのタイミング (旅のハイライト)

 さてログハウス調のBARとオーロラといったロマンチックな夜を過ごしシャチツアーDAY2が始まった。貴重な明るい時間帯に出発してシャチを探すシステムにも慣れたものである。こんなものでは動揺しない。探すことまた1時間。シャチの群れを発見。かなりの個体数だ。
 私たちは急いでドライスーツに着替えゴムボートで接近。この時の動画がとにかくカッコいいのでこれだけでも見てほしい。

(動画) シャチとの並走。とにかく泳ぐ姿がかっこいい。

 そしてついにこのタイミングがやってきた。ガイドからの合図「GO! DIVE NOW! GO GO!!」 ついにシャチと同じ空間を共有できる。こんにちはシャチさん。それがこの時の動画だ。

(動画) 人生初のシャチとのスイム。暗すぎてこれでも編集で明るさMAXに

 あ~生きていてよかった。シャチが目の前に。暗い、とにかく暗くて写真は全く取れなかったけど、確実にそこにいる。本当に夢がかなった!!

 感無量。ここノルウェーまで来てよかった。背びれの大きさ、流線型のボディ。白のアイパッチ。海の中で見るシャチはとにかくかっこよかった。世界一かっこいい生き物だ。そんなシャチと同じ空間を共にした。向こうは興味なさそうだったけどそれでいいんだ。海の王者は小物など無視して堂々としていて欲しかった。水族館では味わえない体験に心臓のドキドキが一向に収まる気配を見せなかった。
 参加者もみな水面でジーザスだのオーマイガーだのファンタスティックだの叫んでいた。こういう時に日本語は何ていえばいいのだろうか。あっぱれ!?わが生涯に一片の悔いなし?
 スイムのスタートが出遅れたAさんも無事にシャチを見ることができており、一安心。この後にもう一本スイムをトライしてこの日は終了。

 この日の夜は宴会だった。昨夜は「いい予行演習だった。明日以降に期待だ」と強がっていた皆も内心不安だったのか、今日は「本当に見れてよかった。このために参加したんだから!」と本音を漏らしていた。よかった。器が小さいのは私だけではなかったみたい。宴会のご飯は特別に豪華だった。この日は何を隠そうクリスマス本番12/25。サンタさんからの私への特別な経験のプレゼントだったと今でも思っている。30歳を超えてサンタからプレゼントをもらえるなんて。さすが北欧。サンタの近所?ありがとう。

(写真)クリスマスディナー。美味しいけどしょっぱい。

 和やかな雰囲気で宴会はそのままクリスマスギフト抽選会へ。スタッフからツアー参加者へプレゼントがあるという。なんて粋なはからいなんだ。くじを引き私があてたのはこちら。
 バカでかいコップ。旅行中にもらってどうやって持って帰ればいいかわからないコップ。

(写真) クリスマスギフト。案の定ドイツに帰国してバックパックを確認したら割れていた

 アメリカ人カップルが謎の穴あき銅板皿?を貰っていたが、本当に要らなかったのか気弱なジャップの私に押し付けてきた。君にプレゼントだぜみたいなわけわからん理屈で。いらないと言ったのに押し負けた。これだから世界はアメリカ中心で回ってると思ってるやつらは…悔しいぜ。

(写真)マジでこれ何?灰皿?

 達成感に包まれた和やかな宴会も、シャチスイム中にフィンをなくしたアメリカ人女性をガイドがいじりだし、罰ゲームに歌を歌わせようとするもそれを断るといった流れで空気が悪くなり、
くじけずガイドは「歌がだめならあなたのストーリーを聞かせて」と食い下がることでさらに空気は悪化しお開きへ。怖いって、ガイドさん。皆さんも参加される際はフィンを無くすことにお気を付けを(どうやったら無くなるかわからないけど)

 そしていよいよシャチスイムDAY3最終日の開始だ。

と思ったら終わった。DAY3は開始せず終わった。まさかの強風で船が出せないとのこと。

「おいおい、マジかよ。こちとら15万円/日払っとるんだぞ。本当に終わり?」
私の中の小物がまた騒ぎ出していた。しかし自然相手だからしょうがない。知床もそうだったし…

なんて納得いくか!!1/3がキャンセルって!結局シャチと泳げたの1本だけじゃん!!

シャチ旅の終わり

みんなこんな結果でも笑顔で帰国できる覚悟があれば、ツアーの参加を検討してほしい。私はもういいかなぁ 笑。一応夢がかなってよかった。

(写真)暇だから船着き場の街を散策した。ニシンの加工場?

 尻切れトンボな気持ちで私たちはトロムソにバスで連れてってもらい、これにて無事ツアーは終了。私の夢のツアーが儚くとも終わった。沢山のオーロラと、真っ暗な海中、そしてたまに爆速で通り過ぎるシャチたち。なかなか厳しい旅であったが、この日記を書いているいまはやっぱり行って良かったと思っている。皆さん夢があるならどんなにコスパ悪くても挑戦すべきだ。そのうえでリピートすべきかどうかは判断すればよい。
 私は宝くじで3億円当たったら6日間のツアーに参加することにしよう。

 

トロムソ最終日、Aさんと私はオスロに向かう飛行機が大雪で遅延し、オスロ→日本、オスロ→ドイツの飛行機をそれぞれ逃した。カウンターでAさんお帰国便の振り替え交渉を手伝ってあげて、オスロで一泊しここでバイバイ。本当にここまでありがとうございました。私が思う日本一フッ軽なAさんのおかげで相部屋も比較的ストレスなく過ごせた(いびきが半端なかったが、しょうがない)。

 この日記で伝えたいことは、冒頭で述べた以下の3つ。

  1. フッ軽な友人は本当に大事。自分もこれくらい世界中どこでも顔出せる人になりたい。
  2. 冬のトロムソは暗すぎてシャチが海の中でよく見えない。視力を上げて臨もう。オーロラには最適
  3. シャチはとにかく速い。クジラも速い。一緒に泳ぐなんて幻想。止まっていただけるよう祈ろう。

皆様のご参考にならないマイナーな旅日記にお付き合いありがとうございました。

以上

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